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軽症糖尿病とは

“軽症糖尿病”

医学的には“軽症糖尿病”の定義はありません。一般的にはHbA1c(ヘモグロビンA1c)がそれほど高くない(7%未満)随時血糖値(空腹時)は高くないが食後高血糖だけめだち、糖尿病特有の細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)を認めない状態を指すことが多いでしょう。

軽症糖尿病の病態

健康な人の場合は食事の摂取で体内に糖が流入するのと同時にインスリン追加分泌が始まり、肝臓の糖放出抑制・取り込み増加、末梢での糖取り込み増加によって血糖値の上昇は軽度で、かつ速やかに下降します。言い換えると食事をとっても速やかにインスリンホルモンが分泌され食後の血糖値は上昇しません。しかし肝臓のインスリン感受性が低下すると、食事摂取後の糖放出の速やかな抑制や取り込みの促進がなされず、食後は一過性に高血糖になります。この時期には空腹時血糖は正常でも食後血糖値が140以上に上昇していたり、HbA1cが正常値を超えていたりします。ただし定期検診や人間ドックでは、十分な説明ができず、患者様に誤解を招いてしまい「糖尿病ではない」ので心配ないと考えられてしまいます。また医療者側も治療の必要性を強くは認識しないケースがみられます。

軽症糖尿病の問題点

軽症糖尿病の問題点は患者側も医療者側も治療の必要性を強く感じない事がある点が大きな問題点となります。糖尿病は持続的な高血糖による細小血管障害(神経、目、腎臓)による合併症を防ぐためには血糖値を下げておけばよいのです。したがっていわゆる軽症糖尿病ではこれら最小血管障害の発症は心配ないレベルと考えられるでしょう。軽症糖尿病を「放置」しても、それを差し迫った問題としてことさら大きく取り上げる必要性はないかもしれません。しかし、食後高血糖によって刺激される遅延過剰型のインスリン追加分泌は、肥満を助長することになり、末梢組織でのインスリン抵抗性も亢進します。やがて膵臓が疲弊しインスリンの基礎分泌も低下して、顕性の糖尿病へと移行します。つまり軽症糖尿病の多くは、将来的に糖代謝異常が'軽症'のまま推移するのではなくて、'中等症'または'重症'の糖尿病へと進行する過程にあたるということです。

 また食後の過剰なインスリン分泌は、高血圧、高脂血症を惹起し大血管障害を進行させる、メタボリックシンドロームと呼ばれる病態を形成します。近年、心血管系イベントが発症する前の動脈硬化症の診断に、Bモードエコー法による頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)の測定が用いられますが、境界型あるい軽症糖尿病の段階ですでに、動脈硬化が明らかに進行していることが指摘されております。糖尿病の治療目的は最小血管障害を予防するだけではなく、近年増加している脳梗塞、心筋梗塞の予防にあるのです。これら脳梗塞・心筋梗塞の予防には長い時間が必要です。5-10年と長い期間血糖値、血圧、脂質コントロールをしっかりすることで初めて脳梗塞心筋梗塞を予防できるのです。したがって50歳代、60歳代で脳梗塞心筋梗塞にならないためには40歳代50歳代からしっかりと軽症糖尿病を治療しておくべきです。

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