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講演会 糖尿病早期治療の重要性

[2018.03.08]

3月6日大森東急REIホテルで開催された「糖尿病早期治療の重要性in城南」に参加しました。一般演題は「血管合併症予防を見据えた糖尿病早期治療戦略」東邦大学医療センター大森病院 糖尿病・代謝・内分泌センター 鴫山文華先生、特別講演は「なぜ2型糖尿病治療は、より早くからよりよくすべきなのか」順天堂大学 名誉教授 河盛隆造先生でした。

鴫山先生からはこれまでに実施された大規模研究の結果から血糖コントロールをよくすることで糖尿病合併症が抑制されること、さらにはその効果は長期にわたり影響するLegacyEffect(遺産効果)があることからより早期からの治療が有効であるおはなしがありました。遺産効果とは聞きなれない言葉で、Legacyと聞くと少しNegativeなイメージですが糖尿病治療においてはPositiveな効果として使われています。またSGLT2阻害薬のEMPA REG -Outcome,CANVAS試験の結果より心血管予防により良い薬剤選択についてお話がありました。自身の研究結果より2つの論文のご紹介がありました。

Linagliptin improves endothelial function in patients with type 2 diabetes: A randomized study of linagliptin effectiveness on endothelial function. J Diabetes Investig. 2017 May;8(3):330-340.ShigiyamaH., Uchino H, Hirose T., et al.

Effectiveness of dapagliflozin on vascular endothelial function and glycemic control in patients with early-stage type 2 diabetes mellitus: DEFENCE study. Cardiovasc Diabetol. 2017 Jul 6;16(1):84. Shigiyama F., Kumashiro N., Uchino H., Hirose T., et al.

どちらもFMD(flow‐mediated dilation)で血管内皮機能を評価しています。それぞれメトフォルミンとDPP4阻害薬、SGLT2阻害薬を投与した際のFMDの改善効果をみたランダマイズドスタディーでした。結果は血糖改善効果や血圧低下効果とは別にFMDによる血管内皮機能改善が認められるというもので、それぞれ対象患者さんが中年糖尿病患者様と高齢者糖尿病患者様のちがいはありますが両薬剤の動脈硬化進展抑制効果が期待されるとのお話でした。

続いての特別講演では河盛隆造先生のお話しでした。私が大学時代に大変お世話になった先生で現在は順天堂大学名誉教授、Spotologyセンター長、トロント大学生理学教授をなさっていらっしゃいます。1時間長のご講演でとてもここには書ききれない内容でしたがとても勉強になりました。

Spotologyとはスポーツを科学する新しく作られた学問(言葉)とのことで、スポーツは生で見て見る事で脳が活性化する脳科学的な問題や、なぜ人はスポーツをするのかといった哲学的な分野まで研究の対象としています。現在スポートロジーセンターでは全身の消費カロリーを測定するメタボリックチャンバー、筋肉・肝臓・心臓の脂肪量や筋肉量を測定するMRI/S、Stable Isotopeを使った糖代謝の解明、骨量の測定、筋肉の生検(バイオプシー)を駆使して運動による体の変化を詳細にとらえ、研究を行っています。

50歳代の男性被験者を測定してみると肥満はないのに筋力が低下しており、エネルギー消費が低下、内臓脂肪が増加、肝臓での糖取り込みが低下、骨格筋のインスリン抵抗性が上昇していることが明らかとなっています。

Relation Between Insulin Sensitivity and Metabolic Abnormalities in Japanese Men With BMI of 23-25 kg/m2. J Clin Endocrinol Metab. 2016 Oct;101(10):3676-3684. Takeno K, Tamura Y, Kawamori R, Watada H.

肝機能の指標であるALTは正常値内でも20を超えると肝臓でのインスリン抵抗性が上昇してくることも示されており、メタボリック症候群のようにウエスト周囲径が大きくなくとも体の中では異常が起きていることも判っています。

また、驚くことに20台女性で非肥満のOffice Workerの方を調べてみると骨量の低下やビタミンD不足になっており、筋肉量も低下しておりサルコペニア(5.4㎏/㎡)に匹敵していることも示されました。Suzuki R  not in press

これに関連して、エネルギー源で重要な炭水化物を取らずに肉や魚のアミノ酸ばかり摂取していると筋肉がエネルギー源として利用され筋肉量が減ってしまうので極端な低炭水化物食については大変注意が必要であることにも言及されました。(人は一日に300-700グラムのブドウ糖を利用している)

また本題の糖尿病については、わずかな高血糖がすい臓のβ細胞やα細胞に影響を及ぼし糖尿病をさらに悪化させてしまうため、(Autophagy不全、PDX-1機能障害等)早い段階から血糖値を正常にすることで糖尿病の悪化を阻止するべきであるとお話しされました。今の糖尿病治療は糖尿病が悪化してから(A1cが7%)治療する事が多く、それは病態的には大変もったいないとのことです。

切り札は早打ちに使ってこそ有効!です。

 

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