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米国内科学会 HbA1c目標値

[2018.03.12]

ACP(American Collage of Physician:米国内科学会)はAnnals of Internal Medicine誌で糖尿病治療にかんするガイドラインを発表

簡単にまとめるとたくさんの薬を処方して無理に血糖値をよくする必要はない。という内容です。具体的には

  1. 薬物療法の利益と害、患者の好みや希望、患者個々の健康状態と余命、治療による負担および医療費についての話し合いを踏まえ、2型糖尿病患者の血糖管理目標を個別化する
  2. ほとんどの非妊娠成人2型糖尿病患者におけるHbA1c目標値は7-8%とする
  3. HbA1c6.5%未満を達成している患者に対しては、薬物療法の強度を下げることを考慮する
  4. 高齢(80歳以上)、介護施設居住、慢性疾患(認知症、癌、末期の腎臓病、重症COPD、うっ血性心不全など)などにより、期待余命が10年以内の患者は、高血糖に関連した合併症を最小限にする治療をしながらも、HbA1c目標値は設定しない

といった内容です。

ずいぶん主治医に投げっぱなしたガイドラインな印象で、患者も医者も困惑してしまいます。

確かに最近80歳以上のかたで糖尿病薬だけで4-5種類内服している方を時々見かけます。HbA1cは6.2%とかなり良好でくわしくお話を聞いても低血糖症状はない様子です。ただしご飯は食べないようにしている方が多く、かなりの低炭水化物食を実践されておられます。Treatment Burdenという言葉が何度もガイドラインでてきますが、80歳も半ばに来て強い食事制限をしてたくさんの薬を飲んでいる姿を見ると重い足枷を付けられているような気がします。診断された最初の状態が判りませんが、こういった方の投薬を減らして食事を開放したらどのくらい悪くなるのか、なかなか専門医でも想像がつきません。悪くなってしまったら患者さんも悲しい気持ちになるでしょうし、我々医師もやぶ医者扱いされかねない気持ちもあります。生理学的観点から考えるともう少しご飯を食べてすべての薬をやめて、食前に超即効型インスリンを少量皮下注射しても同様な血糖コントロールができるでしょう。インスリン療法がTreatment Burdenと受け止められがちなので実際には内服からインスリン療法に変更される方はあまりいらっしゃらないと思いますが、私としてはその方が安全で生理的だと思います。

高齢者糖尿病治療ガイドが日本糖尿病学会から発行されました。

日本でも高齢者糖尿病患者さんの治療ガイド(ガイドラインではない)が発行されました。老年医学会と糖尿病学会が共同で発行したもので治療目標は変わっていませんが、より一般内科医が理解しやすいようにまとまっています。私としては当面このガイドにそって治療していきたいと思います。とてもバランスが良いと思います。

食事療法の重要性

これらのガイドやガイドラインにおいて「適切な食事療法」という言葉が何度が出てきますが、土台となるこの部分のEvidenceが意外に抜け落ちている感が否めません。その人に必要な食事をとっても高血糖になるならばそれは治療の対象となるでしょうが、高齢になるだけでも血糖値は上がってくるのでその分差し引かなくてはならないでしょう。なにより食事は単なる栄養補給だけではなく人の楽しみでもあります。楽しくないと続けられませんし、楽しくない食事をとり続けるのはそれこそBurdenになってしまいます。低炭水化物食をしていたり、お酢がが良いと聞いて毎日飲んでいる方、健康食品をたくさん飲まれている方に質問すると「健康のため」とお答えになられます。しかも格別楽しいとも感じていないようです。何とか楽しく健康によい食事をご案内できれば良いと思います。

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