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認知症勉強会

[2018.02.03]

第7回診療所における認知症の方へのかかわりを考える会(田園調布医師会館)に参加しました。講演1は荏原病院神経内科 田久保秀樹先生から「高齢者運転免許外来の現状」について、講演2は北浜法律事務所・外国法共同事業 弁護士・医師 長谷部圭司先生より「認知症診療における法的問題とその処方箋」として講演をいただきました。高齢者運転免許については2017/3月法令がかわり75歳以上の方が運転免許を更新する際には1次検査をうけて49点/100点未満の場合には診断書の提出命令が出されるようになったこと。診断書の作成には公費が適用される場合もありその内容は、CDR,FAST,MMSE HDS-R,頭部CT/MRI,Spect,PET,MIBG等が含まれておりアルツハイマー型、レビー小体型認知症、血管性、Frontal atrophy,MCIの診断をする必要があるとのことでした。実際に荏原病院では問診、心理テスト<MMSE, WMS-R(ウェ々スラ―記憶検査)の論理的記憶Iと論理的記憶II、FAB(Frontal Assessment Battery at bedside),Cognistat>、頭部MRI,SPECTを実施しているとのことです。全国でみると75歳以上で免許更新の方々の2.73%(3万人)が第一分類として一次検査で診断書提出命令が出されているとのことでこの中で7600人が診断書を提出しているとのことです。多くの方は自主返納して運転経歴証明書をもらっているとのことです。証明書は公の身分証明書として運転免許証と同じように使えます。医療機関では診断書を作成するだけで免許の更新の可否は判断しないとのことです。MCIについては6か月後に再検査となります。荏原病院では約1年で10名程度がこの外来受診されたようで、開始前に懸念していた沢山の方は受診されなかったようです。

一方長谷部圭司先生からは意思決定についてお話がありました。先生は弁護士としてだけではなく医師として外来・救急外来(年間330人)の診察をしていらっしゃるとのことでとても活動的な方でした。お話しはとても分かりやすかったです。診療は診療契約であり患者・医師双方に意思決定する能力があることが前提となるため認知症のかたで医師決定能力がない場合には「無断の治療(投薬を含む)」により傷害罪も適応されるとのことでした。こう聞くといつものように診療できなくなってしまいますが、日常生活においてはこの契約を取り消すことができない(クリニックに入ってきて症状を訴えて、問診をとり受け付けをした時点で契約成立)とのことで具体的に具合が悪い場合は日常生活と位置づけされるため普通に診療できるとのことです。またかかりつけの患者様は準委任契約の状態であり医師は善良な管理者の注意をもって委任事項を処理する義務を負っているため必要な医療はたとえ認知症の患者様が十分に理解できない可能性があってもガイドラインに沿って治療をする必要があるとのことです。Inforemd Consentについてもお話しがありました。これは患者が同意することを指し、自己の置かれている状況を知っていることが前提で同意した場合には結果に自己責任を持たなくてはならない同意のことを指すとのことです。やはり十分な説明の上同意をしてもらうことが重要とのことです。さて認知症がある場合には十分に自己の置かれている状況を理解することが困難であり患者本人にはICできません。この場合法律上は損害賠償請求権のある相続人がこの権利を持つとのことですが、相続人が100人いたり遠方にいたり、生きているのか死んでいるのかもわからない状況が多々あるようです。そこで医療事項代理人(長谷部先生の造語のようです)家族の代理人(家族にきめてもらう)、多種職会議(主治医ともう一人の医師、看護師、ケアマネージャー+家族の一人)のいずれかの方法でICしてもらと良いようです。またこの権利のある家族や親せきには医師の説明を聞き十分に納得してICする義務がありなかなか説明を受けに来ない方は「遅滞なくICをして医療を速やかに実行する」ことを阻害していると取られ「医療的ネグレクト」と判断されるとのことでした。つまり患者や家族がICすることは権利ではなく義務であるとのことです。最後によくあるBPSD(Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の周辺症状)で攻撃的な方に向精神病薬を投与することがあり、前から不安に思っていましたが、ガイドラインにのっとって投与し注意深く診療すればよいようです。やはり裁判の場では医療水準を判断するためにガイドラインがよく利用するようです。「かかりつけ医のためのBPSDに対するガイドライン」ただし薬剤の添付文書は非常に重要で禁忌なのに投与したり、適応外使用で問題が起きた場合は厳しいようです。

少し長くなりましたが良い勉強になりました。

 

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